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藻場再生プロジェクトの結果報告!

★2011年6月3日(金) 北浦地区の藻場再生プロジェクトの結果報告!

◆平成22年度より国の事業の5ヵ年計画で、延岡市内の指定3ヶ所の「藻場再生プロジェクト」が採択され、私たち延岡マリンサービスがモニタリングを担当しながら、藻場を復活させる事業がスタート致しました。

ダイバーである皆さんは、今現在どこの海中も海草や藻の仲間が激減し、俗に言う”磯焼け”という焼け野原のような状態になっていることをご存知だと思います。
専門家によると、その磯焼けの原因のひとつに、「ウニの大量発生」が上げられています。
もちろん、これだけが理由ではありませんが、多くなり過ぎたウニが海草を食い荒らすことで、海草は成長する前にほぼ全滅になるまで食べ尽くされてしまうので、自然に藻場がなくなるし、ウニが多すぎることでエサも不足し、漁師言葉で”痩せたウニ”という中身が入っていない商品にはならないウニや貝となってしまう為、獲って出荷する漁師が減っていくのが続いております。
正直、今現在の一部の漁村では「海草がない!」→「ウニや貝は美味しくない!」→「商品価値がないので売れない!」→「漁師さんも獲らない!」→「ウニはさらに増える!」・・・と、悪循環を繰り返しているのです。

そこでこの藻場再生プロジェクトでは、宮崎県を代表する漁場である①北浦地区、②③浦城地区2ヶ所(須美江・安井)の3ヶ所を指定し、試験的に異常繁殖している空ウニを駆除し、藻場が復活するよう定期的な空ウニ駆除とモニタリングをやっていきます。

平成22年度11月から約半年間のモニタリングの結果をご報告致します。

■写真&文: 延岡マリンサービス 高橋勝栄
■場所: 北浦地区
 

  
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≪2010年11月度≫
 



▲10月度に事前調査を行い、11月前半に私たち延岡マリンサービスが担当で定点観測によるモニターリングが開始しましたが、この時点では写真でも分かるように、嫌になるほど辺り一面の岩礁にはムラサキウニを始めとするウニだらけで、”磯焼け”状態になっていました。 ちなみにこれは北浦地区ですが、その他のエリアも同じように実が入っていない空ウニが異常繁殖しています。
     
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≪2010年12月度≫



▲11月後半に地元北浦の漁師さんら約45名が一斉に作業を行い、約12万個のウニを駆除いたしました。 な・なんと12万個・・・ですよ!! そしてその後の様子が上記写真・・・! あれだけ生息していたウニの姿はほとんど見られなくなり、海底がスッキリしました。 しかしこの事業は、ウニを駆除する為の作業を行うのに・・・、①地元漁師が作業に当たらないといけないこと、②スキンダイビング(巣潜り)で行うこと・・・が条件となっているようで、結果的に交代で3~4日間を掛けて駆除するという、なかなか大変な作業だったようです。 頑張ったお陰でこの周辺に関してだけですが、ウニは激減しました。
     
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≪2011年3月度≫ 



▲そして年が明け、藻が増える3月に再度モニターを行いました。 その結果、写真でみても一目瞭然のように、同じ場所にはウニの姿はほとんど見ない上に、ワカメやフクロノリ、ホンダワラ、クロメなどなど、見渡す限り海草が生い茂り、見事な藻場が復活していましたv(^^)v この結果は、私たちこのプロジェクトに携わっているものとして本当に嬉しい限りでした。 最適な場所を選定し、間引き程度ではなくて徹底的に空ウニを駆除することで、ここまでの効果が得られたのだと思われます。 もちろん全くウニがゼロになった訳ではありませんが、残っている少量のウニには実が入り始め、ここ数年商品になりえない品物になっていた地元のウニが、中身がない空ウニではなく確実に健全な状態になりつつあります。
  
≪2011年6月度≫


▲そして今年6月度のモニタリングでは、3月度のモニタリングでの岩礁を覆いつくすようにワカメ、ホンダワラ、フクロノリなどがあった場所は、それらの海草はなくなっており、逆に大本命の”クロメ”が至る所に生息し始めていました。 さらにウニは中身がビッシリ詰まっていて、甘みのある商品になりえるウニになっていました。 これは一定の成果が出た証ではないでしょうか。
         
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【食害の様子】

▲クロメをジックリ観察してみると、魚などの食べた痕がシッカリあります。 こうしてみると回遊している魚たちは、やはりエサを求めて泳いでいるのだろうから、藻場が再生することで必然的にこの周辺に魚が集まってくる可能性を秘めています。
またエサがあると、実がシッカリ入った商品価値の高い美味しいウニや貝が増えるわけなので、漁業で生計を立てている地元漁師にとっても絶対プラスになるはず・・・と確信したところです。
    
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【最後に・・・】
◆同じ海中の生き物であるウニを人間が勝手に駆除するの活動は、賛否両論あると思います。
異常繁殖してしまった空ウニには何の罪もないし、とても悪いと思っていますが、焼け野原のような海を昔のような健全な海に少しでも戻す為には、試す意味や意義が、そこにはあると思っています。
   
近年、相次ぐ天災や気温や水温の上昇を始めとする環境変化が続いています・・・。
これは、この地球が何らかの”悲鳴”を上げているのだと、私だけでなく、そう感じる方も多いのではないでしょうか??
身近な周辺環境を見ても確実に変化しています。 もちろん海中も年々何かが変わって行いってます・・・。
そんな中、私たち人間に何が出来るのか? その活動をする意味が本当にあるのか? きっとハッキリとした答えが言える人はきっと誰もいないと思います。
学者や専門家の中には、温暖化対策や漁業再生を含む多くの取り組みを全否定する方もいるでしょうし、ダイバーが行うサンゴ移植もそうですが、環境保護に対する活動にとってキチンとした結果が出ていない事が多いのも事実・・・。
でも私たちはこの地球で、そしてこの業界で生きていかねばならない・・・! また地元の海を守りたい・・・! 昔のような豊かな海へ戻したい・・・!
何もやらずにダメになっていくのを、指をくわえたままボーッと見ているくらいなら、結果がキチンと出なくとも、”やらないよりはやった方が良い!”と私たちは考えています。
    
今回のように良い結果が出ることは、とても勇気と元気をもらえることだけど、結果でなくても今出来ること、やるべきことを少しでも多くの方が各立場にて何かをやっていけると、時間は掛かるかもしれないけど、良い方向に向かうのでは・・・と、思っています。
   
今後も引き続きモニタリングをして参りますので、またご報告して行きたいと思います。
  
昔の海に少しでも近づけることを夢見て・・・! 
延岡マリンサービス 高橋勝栄